就職

目次

1.実質の就職率とみかけの就職率

 

・就職率の計算の仕方
・文部科学省が示す「就職率」の定義
・実質の就職率とみかけの就職率との差

 

1.実質の就職率とみかけの就職率

 

就職率の計算の仕方

 

大学が公表する就職率は、今までは長らく「就職希望者の中で、何人が就職したか」という計算をしていました。

「就職希望者」以外とは、次のような学生です。

A.大学院や専門学校進学希望
B.正規社員としての就職ではなく、契約やアルバイトを希望
C.起業や自分の技能を活かした個人事業を希望
D.進路未定、又は就職課との連絡なし
E.家業見習い、家事手伝い希望
F.「就職希望登録書」を大学に提出していない

仮に卒業生が100人いたとします。
そして100人の「卒業生」の内、「就職者」は60人だったとします。

この場合、60人÷100人で、「実質の就職率」は60%になります。
決して大きいとは言えない数字ですね。

しかし、多くの大学の大学案内には、「就職率は90%」となどと大きな数字が書かれています。

この差はどのように生まれるのでしょうか?

 

まずは、文部科学省が言うところの「就職率」の計算方法を記します。

 

文部科学省が示す「就職率」の定義

 

文部科学省の「就職率」の定義は、こちらをクリック願います。

『「就職率」については、就職希望者に占める就職者の割合をいい、調査時点における就職者数を就職希望者で除したものとする。』
との表記に注目です!
分母が「卒業者」ではなく、「就職希望者」なのです。

 

実質の就職率とみかけの就職率との差

 

架空の例を記します。

在学生を100名とします。
就職活動前の「就職希望者」は、そのうち90人だったとします。

春夏秋冬と就職活動をした結果として、就職先が決まった学生が60名、「就職希望者」90名の中で就職が決まらなかった学生が20人いたとします。

大学は卒業間際に、この学生からアンケートをとります(文部科学省が求める調査時点とは4月1日ですので、大学は卒業間際にアンケートをとります)。

アンケート内容は「今も就職希望ですか?それともアルバイトや家業手伝いなどですか?」。

この問いに対して、就職活動をあきらめた20人の学生は、「就職希望」とは答えずに、現実的には「アルバイト希望」「その他の進路」と答えるケースが多いです。
このように答えると、この学生は「就職希望者」の員数から除外されます。

すなわち、当初の「就職希望者」90名が、卒業間際には70名に減少することとなります。
卒業間際で計算し直しますと、「就職率」は、60人÷70人で86%になります。

「当初の就職希望者数」の90人から、「卒業間際の就職希望者数」の70人に減らすことによって、
分子の60人は変わりありませんが、分母を90人から70人に減ることになります。

この計算の結果、「就職率が60%」だったものが、「就職率が86%」に急上昇します。

まるで、「水増し」ならぬ「水減らし」の計算方法ですね。

いうならば、60%は「実質就職率」、86%は「みかけの就職率」といえるでしょう。

大学は、大学パンフレットなどの広報では、この「みかけの就職率」を掲載することが多いようです。
ここ2~3年になって、ようやく「実質就職率」も発表し始めた大学が増え始めました。

もちろん、夢を実現するために卒業後にある程度の修業期間や体験期間が必要な進路もあります。
例えば、美術・演劇・音楽・調理などの分野です。
これらを希望する学生が多い学部は、結果として「実質就職率」が下がることになります。
ある意味では、本来の夢の実現を目指すことですから拍手を送りたくもあります。

ただし、何の理由もなく「実質就職率」が低い大学は、何が原因で実質就職率が低いのかを大学の就職担当部署や入試広報担当部署に問うことが必要ですね。