16.懲戒後の人事:室伏広治スポーツ庁長官を支える次長

こんにちは。

東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会会長を辞任した森喜朗氏の後任人事が注目されています。

そんな折に、室伏広治スポーツ庁長官を支えるスポーツ庁次長を例に、文部科学省における懲戒後の人事について感想を述べます。

 

まずは、2017年1月に発覚した天下り事案からスタートしましょう。

前川喜平事務次官が引責辞任することになった事案と申せば、思いだされる方も多いことでしょう。

文部科学省における再就職等規制違反を振り返る

 

事の起こりは、内閣府再就職等監視委員会が文部科学省へ「国家公務員法に規定する「再就職等規制」に違反する旨の調査結果」を通知したことに始まります。

この調査結果は、「Y元文部科学省高等教育局長が早稲田大学大学総合研究センター教授に天下りした事例に関し、2015年に在職中であった文部科学省職員が利害関係のある法人に対し求職活動を行ったこと、および人事課の職員がその法人に職員の情報を提供した」という通知でした。

競争的科学研究費・補助金・奨学金の採択、および学部新設や新プログラムなどにおいて、文部科学省の各大学に対する権限が強化されていた時期です。

文部行政の変化の中、各大学は文部科学省の動向及び実務について敏感でした。
大学側に身を置くと、文部科学省職員を理事や事務局長や教員として受け入れることによる実利と見返りを期待したとしても無理はありません。

しかしながら、2008年末に施行された改正国家公務員法は、現役職員による再就職の斡旋を禁じていました。

この法律をかいくぐるために文教フォーラムを隠れ蓑にして、大学と文部科学省人事課との間で関係付けを取り持ちました。
「文部科学省職員の人材情報」と「大学の求人情報」とのマッチングをしたと見られます。

 

懲戒処分の内容

 

文部科学省の内部調査によって、62件の国家公務員法違反が確認されました。

OBである歴代事務次官8名を含む幹部37人が懲戒処分を受けたそうです。

処分内容については、訓告、戒告、文書厳重注意、減給、停職でした。

参考にしたのは日本経済新聞(2017年3月31日)です。
最後にコピーを載せます。

 

処分内容で一番重い「停職」の職員の今

 

当時の文部科学省大臣官房人事課長は、他省の職員の履歴書送付・面談の日程調整の実務まで関わったせいか、処分内容で一番重かった「停職3ケ月」。

参考サイト

「文部科学省における再就職等問題に係る調査報告(最終まとめ)概要(2017年3月30日)」

「文部科学省における再就職等問題に係る調査報告(最終まとめ)本文(2017年3月30日)」

文部科学省における再就職コンプライアンスの取組

 

さて、停職となった元人事課長が、今どのような役職を担っていらっしゃいますでしょうか?

 

「スポーツ庁次長」です。(2021年2月17日現在)

室伏広治スポーツ庁長官に次ぐNo2です。

(スポーツ庁の定員は120人)

 

(画像引用:「スポーツ庁組織図」)

 

文部科学省の懲戒後の人事への感想

 

 

地方公務員(教育公務員)では、「停職3カ月」という重い懲戒の場合、懲戒後の人事において冷や飯を食うことになりますね。

一例:日本酒1升飲み運転の教諭 停職3か月の懲戒処分 島根(

 

ところが、キャリア官僚の場合は異なるようですね。

スポーツ庁次長とは、どれくらいの役職なのかは私にはわかりません。

参考になりそうなのは、次長に次ぐスポーツ庁No3の現審議官が「国立高等専門学校機構理事→官房参事官」を今まで歴任していたということです。
時評社サイト参照)

 

日本経済新聞 「文科省天下りで37人処分 最終報告、違法事案62件に」(2017年3月31日)

 

標記記事を載せます。

文部科学省による組織的な再就職あっせん問題で、松野博一文科相は30日、国家公務員法に違反する行為があったなどとして、歴代事務次官8人を含む37人を処分したと発表した。2月の中間まとめ以降、同省の調査で新たに27件の違反が判明。違法事案は2010~16年の計62件となった。うち半数で仲介役のOBを経由せず、現役職員が直接関わっていた。

同省はこれらを盛り込んだ最終報告を29日、政府の再就職等監視委員会に報告した。1月に公表した分を含め、天下り問題での処分者は計43人。同省では過去最多となった。最終報告では2月の中間まとめで違反が確認できないとしていた8件も違法と認定した。

松野文科相は30日、記者会見して謝罪し「国民の信頼を失ったと感じている。文科省の組織風土を改める」と述べた。同省の問題を受け、内閣人事局も全省庁の国家公務員の天下りの実態調査を進めている。

今回処分された37人のうち懲戒処分は16人。前川喜平、山中伸一、清水潔各氏の歴代事務次官を含む5人が最も重い停職(退職者は停職相当)で、11人が減給や戒告。戸谷一夫事務次官ら21人が訓告や文書厳重注意となった。駐ブルガリア大使を務める山中元次官は30日、岸田文雄外相に辞意を伝えた。

再就職の仲介役だった人事課OBの嶋貫和男氏は関与が退官後だったため処分対象から外れた。

国家公務員法は職員が退職者の再就職をあっせんすることなどを禁じている。

最終報告は、08年末に再就職規制が厳しくなったことへの対応として、OBによるあっせんは違法ではないと軽く考えたことで、組織的なあっせんが始まったと指摘。再就職に関する情報は嶋貫氏や別のOBなど様々なルートを通じて人事課や現役職員に伝えられた後、人事課で集約され、意見を聞き調整するために事務次官らと共有することもあった。

今回新たに判明した27件のうち、12年11月にOBが在籍する金融機関が文科省に後任人事の相談をしたケースでは、相談を受けた人事課職員が嶋貫氏に報告。金融機関側との窓口になり、別のOBが就く人事案を幹部らに報告していた。私立大学の振興や助成に関わる私学部長は15年1月、旧知のOBから再就職の希望を聞き、私大に人事情報を提供していた。

同省の調査で明らかになった人事課内の引き継ぎ書類には再就職先を決める手順が記され、この中で嶋貫氏は「某氏」と名前をぼかして書かれていた。政府の再就職等監視委員会の調査に虚偽の回答をする手法も継承されていた。

一方で、違法とされた62件の半数は嶋貫氏を介さず現役職員が直接関わっていた。外務省職員や経済企画庁(現内閣府)元職員の再就職先について、人事課長が大学と情報をやりとりしていた。

文科省の調査班は関係する職員らにヒアリングを計309回実施。調査班によると、処分を受けた職員の一部は違法性を認識していたが、「やめた方がいい」と主張した者はいなかったという。

以上

 

なお、負け知らずの十種競技元日本チャンピオンであり、妄想格闘家の武井壮氏は、室伏広治氏にだけは勝てないそうです。

→日本放送:スポーツ庁長官・室伏広治は「倒せない!」……百獣の王・武井壮が「最強のアスリート」と評価する理由

「最高の生物:室伏編」

 

15.大学入試で受験生に求める学力とは? ーアドミッション・ポリシーは各大学に任せよー

こんにちは。

 

「大学入学共通テスト」が導入されて初めての入学試験の最中です。

鳴り物入り改革であった「記述式問題の導入」と「英語の資格・検定試験の共通テスト」はというと、結局は導入を見送られました。

結構なことだと思います。

参考→「高校生新聞」

 

今回は、これら改革案のキー概念である「アドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針)」について、考えます。

具体的には、
・「大学は受験者に対して、入学試験で何を問えばよいのか?」という問題について考えます。

 

目次

1.「アドミッション・ポリシー」の意味は? ーその位置づけについてー

2.入学試験で把握すべき3つの学力についてー文部科学省の考え方とはー

3.大学入試は、企業採用試験と同じでよいのか?

4.アドミッション・ポリシー・求める学力内容については大学に任せよ

 

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まずは、「学校教育法施行規則 (第四節 認証評価その他 第165条の2」を引用します。

(「認証評価」については、「学校教育法第109条」を参照願います)

 

第百六十五条の二 大学は、当該大学、学部又は学科若しくは課程(大学院にあつては、当該大学院、研究科又は専攻)ごとに、その教育上の目的を踏まえて、次に掲げる方針を定めるものとする。

一 卒業又は修了の認定に関する方針
二 教育課程の編成及び実施に関する方針
三 入学者の受入れに関する方針

 

すなわち、学生を受け入れて送り出すまでの3方針を大学が策定し公開するよう、「学校教育法施行規則」に文部科学省が加えたのです。

(3方針を策定・公表しないならば、大学として認証されませんので、大学にとりましては必須事項となります)

 

なお、大学内、およびマスコミ等では、次のように「出口・中身・入口」と表現されることが多いです。

 

1.(出口についての方針)
「ディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与の方針)」

2.(中身についての方針)
「カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)」

3.(入口についての方針)
「アドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針)」

 

2.入学試験で把握すべき3つの学力についてー文部科学省の考え方とはー

 

文部科学省高等教育局長は毎年、「令和〇年度大学入学者選抜実施要項について」という通知文を各大学長宛に送ってきます。

各大学は、この実施要項に沿って入学試験に関するあらゆる事柄を議論・決定・実行しなければいけないこととなります。

どのようなことが書かれているのかと申しますと、例えば、受験生を評価するにあたりアドミッション・ポリシーに基づき「3つの学力」を把握することが記されています。

 

3つの学力については、このように書かれています。

 

能力・意欲・適性等の評価・判定に当たっては,アドミッション・ポリシーに基づき,学力を構成する特に重要な以下の三つの要素のそれぞれを適切に把握するよう十分留意する。

その際,入学後の教育との関連を十分に踏まえた上で,入試方法の多様化,評価尺度の多元化に努める。
なお,高等学校の学科ごとの特性にも配慮する。

① 基礎的・基本的な知識・技能(以下「知識・技能」という。)
② 知識・技能を活用して,自ら課題を発見し,その解決に向けて探究し,成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力(以下「思考力・判断力・表現力等」という。)
③ 主体性を持ち,多様な人々と協働しつつ学習する態度

 

(引用元:「令和3年度大学入学者選抜実施要項について(通知)」

 

結論としましては、①②③が「学力」を構成する3要素であると文部科学省が主張していることになりますね。

 

3.大学入試は、企業採用試験と同じでよいのか?

 

文部省が主張する学力3要素、まるで企業の採用試験において人事担当者が言いそうな言葉ではないでしょうか?

例えば、「弊社が皆さんに求める能力は三つあります。それは第一に「知識」。第二に「問題発見解決能力」。第三に「コミュニケーション能力」です」。

大学入学試験で受験生に求める学力が、企業採用試験で学生に求める学力と同じで良いのでしょうか?

学力の3要素について順に考えていきましょう。

 

1.① 基礎的・基本的な知識・技能。

これは、理解できます。

 

2.② 知識・技能を活用して,自ら課題を発見し,その解決に向けて探究し,成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力。

ここからが急に理解不能になります。

何点か挙げます。

・① とは異なり、単語に「能力」が付いていることからが不思議です。

・「自ら課題を発見し」とありますが、課題というものは個々人によって異なるものであり、何を課題とするかに優劣はないです。

・「成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力」とありますが、成果等を表現するとはどういうことでしょうか?
無言で黙々と作業をこなすタイプ、有言実行・無限実行のタイプ、課題を課題とすら感じないタイプ、それぞれ成果の表現方法は異なります。
そもそも、思考力・判断力・表現等の能力は、成果等を表現するためのものでしょうか?
余りにも表現優先となっている点が不可解です。

 

3.③ 主体性を持ち,多様な人々と協働しつつ学習する態度

どのような入学試験をしようとも、この学力は測れないです。
面接を導入しても不可能です。
ましてや、「態度」に対してどのように優劣をつけるのでしょうか?
「態度」の優劣は、嫌みですが面接官の好みでしかありません。

 

②と③の「表現」「多様性」「協働」という単語は、社会一般で流行っている言葉を「要項」に流用しただけなのではないかと思いたくなります。

 

 

4.アドミッション・ポリシー・求める学力内容については大学に任せよ

 

「③ 主体性を持ち,多様な人々と協働しつつ学習する態度」。

文部科学省の言葉です。

 

受験生を評価する学力に「多様な人々」と書くくらいならば、同様に「多様な大学」を認めて欲しいものです。

 

 

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15.大学入試で受験生に求める学力とは? ーアドミッション・ポリシーは各大学に任せよー

14.オリンピックへのボランティアを大学に通知した高等教育局長は今?