6.専門職大学の審査結果から読み取れること

こんにちは。

今回は、10月5日に発表されました「専門職大学の審査結果」について概略と思うところを書きます。

 

目次

1.専門職大学等について(大枠の説明)
2.専門職大学等の概要・特色について(概要の説明)
3.平成31年度開設予定大学等認可申請一覧について
4.大学設置・学校法人審議会による審査結果答申について
5.認可が認められなかった理由について
6.学校法人に必要な対処法について
7.認識を改めること

 

 

1.専門職大学等について(大枠の説明)

 

専門職大学については、次の文章を文部科学省は示しています。

『専門とする職業分野の高度な実践力と、それを他分野の知識等と結びつけて新たなモノやサービスを生み出す豊かな創造力を育てる新しいタイプの大学・短期大学です。
産業構造の急激な転換などの経済社会の状況や、高等教育をめぐる状況の変化などを踏まえ、政府の教育再生実行会議が「質の高い実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化」を提言したことを受けて創設された制度で、産業界からも注目されています。
平成31年4月からの開設(入学)を予定しています。』

さらに、質疑応答形式で、次のこととが述べられています。

・特徴
・どんな学生に向いているか
・どんな分野を学ぶのか
・今までの大学・専門学校との違い

「質疑応答形式」での説明は、こちらをクリック→文部科学省サイト

「概略の図示」は、こちらをクリック→文部科学省サイト

 

2.専門職大学等の概要・特色について(概要の説明)

 

文部科学省の資料を引用し、概要と特色を記します。

【専門職大学等の概要】

 産業構造の急激な転換により、社会における将来の予測の困難化が進んでいます。一方、高等教育においては、高等教育進学率が上昇する中で、産業界等からはより実践的な教育へのニーズや、学び直しへのニーズへの対応が求められ、変化の激しい社会に対応した人材、すなわち、より高度な「実践力」と新たなモノやサービスを創り出せる「創造力」を有する人材の育成強化が急務となっています。
「専門職大学等」は、大学制度の中に、実践的な職業教育に重点を置いた仕組みとして制度化するものであり、産業界との密接な連携により、専門職業人材の養成強化を図り、また、大学への進学を希望する方にとっても新たな選択肢が広がるものです。

専門職大学・専門職短期大学の制度化について  (PDF:278KB) PDF

 

【専門職大学等の特色】

専門職大学等は以下の点で既存の大学制度と異なる特色があります。

1.教育内容

専門職大学等は、その専門性が求められる職業に就いている者、当該職業に関連する事業を行う者その他の関係者の協力を得て、教育課程を編成、実施することになっており、産業界等と連携した教育を実施することが義務付けられます。
また、卒業単位のおおむね3~4割程度以上を実習等の科目とするとともに、適切な指導体制が確保された企業内実習等を、2年間で10単位以上、4年間で20単位以上履修することとしています。

2.修業年限

4年制課程の専門職大学と、2年制又は3年制課程の専門職短期大学があります。
専門職大学は前期課程及び後期課程の区分制課程も導入できることになっています。これにより、前期課程修了後一旦就職してから後期課程へ再入学する、社会人が学び直しのために後期課程から入学するなど、多様な学習スタイルを選択できます。

3.教員

実務家教員を教員組織の中に積極的に位置づけ、必要専任教員数のおおむね4割以上を実務家教員とし、その半数以上は研究能力を併せ有する実務家教員とします。

4.入学者の受入れ

高等学校(専門学科・普通科)卒業後の学生、社会人学生、編入学生など、多様な学生を積極的に受入れます。
入学者選抜では実務経験や保有資格、技能検定での成績等を積極的に考慮し、意欲・能力・適性等を多面的・総合的に評価します。

5.学位

専門職大学を卒業した者に対し「学士(専門職)」の学位を、専門職短期大学を卒業した者に対し「短期大学士(専門職)」の学位を授与します。
また、専門職大学の前期課程を修了した者に対し「短期大学士(専門職)」の学位を授与します。

6.修業年限の通算

社会人の学び直しを推進するため、実務の経験を有する者が専門職大学等に入学する場合に、当該入学者の実務経験を通じた能力習得を勘案して、一定期間を修業年限に通算できます。

7.認証評価

専門職大学等の認証評価においては、専門分野の特性に応じたいわゆる分野別評価を行います。

(引用元→文部科学省サイト「専門職大学等の概要・特色」)


3.平成31年度開設予定大学等認可申請一覧について

 

平成29年12月において、文部科学大臣が大学設置・学校法人審議会の大学設置分科会へ諮問した専門職大学等の一覧の1ページ目です。

画像が小さいので、次をクリック願います。
→文部科学省サイト「平成31年度開設予定大学等認可申請一覧 」

 

専門職大学は13校、専門職短期大学は3校、合計16校が申請を出したことがご覧になれます。

この16校中、いくつの学校の申請が認可されたでしょうか?

次は、審査結果について記します。


4.大学設置・学校法人審議会による審査結果答申について

 

結果として、1校が認可されたにとどまりました。

 

【設置を認可された専門職大学】

高知リハビリテーション専門職大学

・学校法人高知学園
・高知市土佐市
・入学定員150名
・附帯事項として、
遵守事項:6項目
助言事項:3項目

・平成31年度開設予定の大学の設置に係る答申について(平成30年10月5日)

・平成31年度開設予定大学一覧(高知リハビリテーション専門職大学)

・高知リハビリテーション専門職大学の「大学案内」
(学校法人高知学園サイト内に掲載されている学園が作成した大学案内)

 

【審査継続(保留)】

2校

(他校は審査の過程で申請を取り消し)

 

5.認可が認められなかった理由について

 

審査結果について大学設置・学校法人審議会大学設置分科会が記したことを箇条書きにします。
(太字のタイトルは筆者が加えました)

 

1.目玉であるところの実習方法が不明瞭

専門職大学の特色である実習の内容、評価基準、実施体制が十分検討されていない。

2.教員の業績不足

優れた実務上の業績がない者が実務家の教授等として申請されている。

3.理論教育が不十分

実践的かつ創造的な専門職業人材の専門性の支えとなるべき理論の教育が不足しているなど大学教育としての内容・体系性が不十分である。

4.施設・設備が未整備

教育課程連携協議会の構成員が不適切、理論と実践を架橋する教育を行う機関として専門職大学等に求められる「実践の理論」を重視した研究を行う施設・設備が整備されていないなどの課題が見られる。

5.設置計画では社会的使命が果たせられない

教育課程や教員組織、施設・設備等の面で、専門職大学制度の特色を活用してその社会的使命を十分に果たす適切な設置計画としては認められないものが多くみられた。

6.設置基準と乖離

実習の必要単位数や実務家教員について設置基準に定める要件を明らかに欠いている。

7.事務体制の不備

申請に必要な書類が十分作成されていない。

8.意見への対応が未熟

審査意見に対して適切に対応がなされないなどの状況も多くみられ、審査に支障を来すことも少なくなかった。

9.(総括)

これらを踏まえると、多くの申請案件において、制度創設初年度であるものの、総じて準備不足で法人として大学設置に取り組む体制が不十分と感じられた。

(引用元→専門職大学等の審査結果について)

 

表現は柔らかいものの、本質的な事柄を厳しく指摘していると感じました。

 

6.学校法人に必要な対処法について

 

前章の不認可理由をまとめると、このようになるかと思います。

 

1.

専門職大学の特徴であり卒業単位の3分の2以上を占める「実習」の役割認識と内容・評価が未熟である。
更に、専門性を支える「理論科目」のカリキュラム上の位置づけが大学教育としてふさわしくない。

2.

必要専任教員の4割以上を占める「実務家教員」において、業績が不足する者を担当予定者としている。

3.

実践の理論を重視した研究を行う「施設・設備」が整備されていない。

4.

「大学設置に取り組む体制」が不十分である。

 

次は、不認可理由への対処法を簡潔に述べます。

 

1の「実習」と2の「実務家教員」・「理論科目」の充実については、専門職大学設置制度化の意図の根幹です。
ここが不十分ならば、そもそも専門職大学を設置する意義がありません。
学校法人経営者と教育部門のトップレベルで危機感を共有してほしいです。

 

3の「施設・設備」に関しては法人の財力によるところです。
専門職大学を作る資金調達に無理があるならば現在運営する専門学校の教育環境に悪影響を及ぼすことになりかねません。
短期・中期・長期の財務計画を冷静に作り、撤退も含めた慎重な判断を望みます。

 

4の「申請体制」については、新たに大学・学部を設置した法人の申請業務担当者から申請事務のノウハウを早急に学んでほしいものです。
法人内に申請事務経験豊富な職員がいないと判断するならば、他法人の職員を時をあげずに雇用するなりの人的措置を速やかに講じる必要があります。

7.認識を改めること

 

申請法人に求められているのは、文部科学省が意図する専門職大学等の意義を読み取り、その具現化に向けての真摯な努力です。

きっと申請法人なりの努力は積み上げてきたことでしょう。

しかし、結果として、申請した書類内容は大学教育の態をなしていないのです。

このことは、申請法人側が「専門学校の延長上に専門職大学がある」と認識しているからではないかと思われます。
(荒い言葉を使わせていただくならば、申請法人は「大学設置の社会的意義を軽く考えている」のではないでしょうか)
言うまでもなく「大学の一形態として専門職大学がある」のです。

文部科学省のサイトに挙げられている次の文章を再読いただき、もう一度初心に立ち返り再チャレンジを目指して欲しいものです。

「専門職大学等の制度設計に関する作業チーム 議事要旨・議事録・配付資料」の中の「専門職大学設置基準の要綱案について」

 

 

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